結論からいうと、通信制大学に共通する「全国平均の卒業率」を1つの数字で示すのは適切ではありません。大学ごとに公表状況や集計対象が異なり、「入学者のうち卒業した割合」「最短年数で卒業した割合」「在学生数に対する年間卒業者数」は、意味がまったく違うからです。
文部科学省の最新の委託調査では、2023年度に通信教育課程の大学(学部)を卒業した19,733人のうち、最低在学年数で卒業した人は52.0%でした。残りは1年以上かけて卒業しています。ただし、これは「入学者全体の卒業率」ではなく、卒業した人の在学年数の内訳です。
この記事では、出典のない「卒業率約15%」という説明をせず、公式データの正しい見方と、働きながら卒業へ近づくための具体策を解説します。筆者は近畿大学通信教育部法学部へ1年次入学し、仕事と両立しながら4年間で卒業しました。
情報確認日:2026年7月20日。制度や公表値は更新されるため、入学判断では必ず各大学の公式サイトもご確認ください。
通信制大学の卒業率は「約15%」と決めつけられない

検索すると「通信制大学の卒業率は約15%」という説明を見かけます。しかし、母数・対象年度・大学の範囲が示されていなければ、その数字を入学判断に使うことはできません。
まず、次の3つを分けて考える必要があります。
| 指標 | 意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| 入学者ベースの卒業率 | 同じ年度などに入学した人のうち、一定期間内に卒業した割合 | 追跡期間と退学・休学の扱いが必要 |
| 最低在学年数での卒業割合 | 卒業者のうち、4年制なら4年など最短年数で卒業した割合 | 卒業できなかった人は母数に入らない |
| 在学生数に対する年間卒業者数 | その年の卒業者数を在学生数で割った参考値 | 学年構成が違うため卒業率ではない |
文部科学省の「大学通信教育の実態及び教育の質向上等に関する調査研究」では、2023年度の大学(学部)卒業者19,733人を在学年数別に集計しています。最低在学年数で卒業した人は52.0%で、約半数はそれより長く在籍して卒業していました。
この結果から分かるのは、通信制大学では自分の事情に合わせ、標準年限を超えて学ぶ卒業者も珍しくないということです。「入学者の半数が卒業した」という意味ではありません。
文部科学省「大学通信教育の実態及び教育の質向上等に関する調査研究」
大学別の卒業率を比較するときの5つの確認項目
大学が「卒業率」を公表している場合も、数字だけで順位をつけず、次の5点まで確認してください。
- 母数:新入学者だけか、編入学者も含むか
- 期間:最低在学年数だけか、在籍上限まで追跡した結果か
- 対象:正科生のみか、科目等履修生を含むか
- 年度:単年度か、複数年度の平均か
- 学部・入学区分:学部や1年次入学・編入を分けているか
同じ「80%」でも、4年間で卒業した割合と、最長在籍期間まで含めた割合では意味が違います。公表ページに計算式がない場合は、入学説明会や窓口で「誰を母数に、何年間追跡した数字ですか」と確認するのが確実です。
入学前に確認する質問例
- 1年次入学と編入学で、卒業までの平均在学年数は異なりますか
- 働きながら学ぶ学生向けの履修モデルはありますか
- レポート・試験・スクーリングで受けられる支援は何ですか
- 休学・在籍延長の期限と追加費用はいくらですか
近大通信の公式データから分かること・分からないこと
近畿大学通信教育部の公式サイトでは、年度別の卒業生数が公表されています。2025年度は法学部244人、短期大学部322人の合計566人が卒業し、累計卒業生は4.5万人を超えています。
一方、このページに掲載されているのは卒業者数であり、同じ年度の入学者を追跡した卒業率ではありません。在学生数で単純に割って「近大通信の卒業率」とすることもできません。
近大通信への入学を検討するなら、卒業者数だけでなく、在籍期間が延びた場合の学費、スクーリングの受け方、仕事と両立する学習時間まで合わせて確認するほうが、入学後のミスマッチを減らせます。
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通信制大学の卒業が難しくなりやすい5つの理由
1. 締切までの進捗を自分で管理する必要がある
通信制大学は、通学課程のように毎週同じ時間に授業があるとは限りません。自由度が高い一方で、レポート、試験、スクーリング申込みの期限を自分で逆算する必要があります。
2. 仕事や家庭の繁忙期と重なる
学習時間を「空いたら確保する」と考えると、残業や家事で後回しになりがちです。最初から週の予定に固定し、忙しい月は履修量を減らす設計が必要です。
3. レポートの書き方をつかむまで時間がかかる
感想文ではなく、問いに対して根拠を示し、引用ルールを守って論じる必要があります。返却されたときは、能力不足と決めつけず、設題とのずれ・構成・根拠・引用を分けて見直します。詳しくはレポートの書き方と提出前チェック、返却後の直し方をご覧ください。
4. 試験・スクーリングを後回しにする
テキスト学習だけ進めても、試験や面接授業が残ると卒業時期が延びます。年度初めに必要単位と開講時期を確認し、先にカレンダーへ置くことが重要です。
5. 必要な情報を探すだけで疲れる
制度は更新され、個人ブログの体験談には執筆当時の情報も含まれます。大学公式情報と個人の経験を分けて読み、疑問は公式窓口へ確認する習慣が必要です。
働きながら卒業するための5つの対策
1. 卒業要件を「残り単位」ではなく工程に分解する
履修登録、レポート、試験、スクーリング、卒論を1枚に並べます。単位数だけを見るより、「いつ申し込み、いつ提出するか」が明確になります。近大通信の例は4年間の履修計画で紹介しています。
2. 週の最低学習時間を固定する
理想の時間ではなく、繁忙期でも守れる最低ラインを決めます。たとえば平日30分を3回、休日2時間など、小さく固定してから増やします。
3. 1科目を小さな作業へ分ける
「レポートを書く」ではなく、「設題の条件を抜き出す」「参考文献を2冊探す」「見出しを作る」のように、30〜60分で終わる作業へ分けます。
4. つまずきを2週間以上放置しない
制度の疑問は大学へ、学習計画の迷いは履修モデルや経験者の情報へ切り分けます。分からない状態を長く抱えるほど、再開の負担が大きくなります。
5. 最短卒業だけを成功条件にしない
仕事や健康、家庭の事情によって、履修量を落とす時期があっても問題ありません。必要なのは、無理な計画を続けて離脱することではなく、卒業まで学習を再開できる計画です。
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近大通信を4年間で卒業した筆者が実際にしたこと
私は1年次入学から4年間で卒業しましたが、特別に勉強が得意だったわけではありません。簿記2級にも5回落ちた経験があります。卒業できた理由は、能力よりも「期限を先に置く」「止まった原因を小さくする」「完璧を求めず提出する」を続けたことでした。
- 年度初めに必要単位と開講時期を一覧化する
- レポートは設題の条件から見出しを作る
- 返却時は指摘を作業単位に分けて修正する
- スクーリングと試験の日程を先に確保する
- 卒論はテーマを広げすぎず、指導を受けて修正する
私の4年卒業は一例であり、同じ方法で全員が卒業できると保証するものではありません。入学年度・学部・生活状況によって必要な計画は変わります。
よくある質問
通信制大学の卒業率は本当に15%ですか?
「通信制大学全体で約15%」と判断できる統一的な公式データは確認できません。数字を見るときは、母数、対象期間、対象学部、入学区分、算出方法を確認してください。
卒業率が高い大学を選べば卒業できますか?
卒業率は参考になりますが、自分の希望分野、学費、スクーリング、試験方式、学習支援との相性も重要です。算出方法が違う数字を単純比較せず、卒業までの工程を自分の生活に当てはめて判断しましょう。
近大通信の卒業率は何%ですか?
近大公式サイトでは年度別の卒業者数が公表されていますが、そのページだけから入学者ベースの卒業率は算出できません。入学判断に必要な最新の説明は、公式の入学説明会または問い合わせ窓口で確認してください。
4年間で卒業できないと失敗ですか?
失敗ではありません。文部科学省の調査でも、通信教育課程の大学卒業者の約半数は最低在学年数を超えて卒業しています。費用と在籍上限を確認し、継続可能な計画へ修正することが大切です。
まとめ:卒業率の数字より、卒業までの条件を確認する
通信制大学の卒業率は、母数と期間が違えば意味も変わります。出典のない平均値で判断せず、大学公式の公表データを見て、学費・学習方式・支援体制・在籍上限まで確認してください。
卒業へ近づくために重要なのは、最初から完璧な計画を作ることではなく、履修・レポート・試験・スクーリング・卒論を工程に分け、止まったら早めに修正できる状態を作ることです。
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